楽しいイラスト満載、親しみやすい語り口でわかりやすいと大人気のHead Firstシリーズに新たにC#バージョンが登場!プログラミングの基本知識と実際の実装方法を詳しく解説します。プログラミングがまったく初めてという読者でも大丈夫。挫折することなく簡単にC#アプリケーションの構築ができます。C#初心者向け、ビジュアル重視の楽しい入門書です。C# 3.0対応。
推薦のことば
新しい世界への足がかり
C#との付き合いは、2002年の春からだから、もうそろそろ足かけ6年になる。C#と出会う前には、1997年から、Javaの国際標準化に関わっていた。これは、1970年代のCコンパイラの開発と1980年代のLispの国際標準化とを掛け合わせたようなもので、様々な人たちと一緒に仕事できて楽しかった。Javaの国際標準化がSun Microsystems社の内部事情から御破算になって、C#の国際標準化に携わったのは、私にとっては、失地回復の意味合いもあった。
この6年ほどで、C#も変わってきたけれども、C#を取り巻く環境は、もっと大きく変わってしまった。文部科学省の科学技術政策研究所では、情報技術の一般化と基盤化が話題になった。コンピュータの専門家と言われる人たちの存在意義がなくなると同時に、誰もがコンピュータの基本原理、プログラムやシステムの基本についての知識を要求されるようになっている。
これは、あまり声高に論じられていないことだけれども、社会生活を支える重要な業務を遂行支援するコンピュータ・システムを作るためのプログラミング言語として、C#は、今や一つの典型的な例となっている。言い換えると、C#の基本的な機能を理解して使いこなせることができれば、現在のコンピュータ・システムの仕掛けが分かるようになるはずだ。
今回、ヘッドファーストという、イラスト満載のとっつきやすい入門書がC#について作られ、それが日本語になって出版されたのは、こういったことから喜ばしい。本の厚さの関係で、すべてが訳されていないのは残念だが、何もすべてを一度に学ぶ必要もないだろう。そうは言っても総称(generics)の辺りは、学んでおいて欲しいなあ(編注:本書では総称(generics)については触れられていませんが、弊社刊行の『C#クックブック第3版』の「2章 ジェネリック」ならびに『プログラミングC#第4版』の「9章 配列、インデクサ、コレクション」で詳しく解説していますので、そちらをご参照ください)。
現在の大学を含めた学校制度や、企業、社会の制度がこのまま続くとは思えない。すでに、いろいろとほころびも出始めているし、世界のあちこちを見れば、変革の兆しがある。
若い人たちは、新しい事柄を、新しい流儀で学び、それを自分の世界で使っていくべきだ。この本は、そのような新しい旅でのいいきっかけを与えてくれることだろう。その旅の先には、思いがけない出会いも、きっとあるに違いない。
JIS C#原案作成委員会委員長
文部科学省科学技術動向センター客員研究員
CSKフェロー
黒川 利明
推薦のことば
ドキドキ、ワクワクするプログラミングを
この10年インターネットとパソコンの普及で身のまわりのいたるところに計算機が存在し、誰もが計算機を使えるようになってきた。ほとんどの利用者は計算機を単に使うだけである。それはそれで素晴らしいことなのだが、当り前のようにあるので計算機に対する夢は一見すると減ってきたような感がある。しかし、その中でも計算機に興味を持ち、自分でも「プログラムを書いてみたい」と言う人は年齢性別を問わず、確かにいるし、そのような興味が新しいソフトウェアを生み出す原動力になっている。
ところが、どうもプログラミングは初学者にとって難しく思われてしまう。プログラミング言語が持っている計算モデル、文法よりも、そもそも、どのように考えればプログラムを作れるか、でつまずくのは今も昔も変わりはないように思われる。皮肉なことに、現在の計算機はGUI、ネットワークなどバッチジョブのFortranの時代よりも複雑な資源を扱っており、ますます難しい印象を与えているようである。また、さまざまな分野でオブジェクト指向なるものが使われているので、最初に触れる人にとって複雑さは増しているらしい。
大学の教員としてだけでなく、企業に在籍したことも、初等中等教育にも関係したが、プログラミングを学ぶときに、堅苦しい例題や一般論だけで効果があった例を見たことがない。プログラミングやプログラミング言語の良著の多くは、その言語のエッセンスについて楽しい例題と豊富な事例により、その言語の醍醐味を余すことなく伝えてきた。本書は、豊富なイラストと事例、ユーモアあふれる内容で、初学者にとってとっつきにくいオブジェクト指向などの話題をやさしく、わかりやすく伝えている。C#と言う現代、さらには将来性の高いプログラミング言語を実践的な方法で解説している良著である。
C#自身は現代的な洗練されたプログラミング言語である。言語として、新しい挑戦的な機能を含むだけでなく、CLIなどのプログラム実行環境も極めて興味深いものを持っている。ただ、新しい言語ゆえに各種著書が待たれる状況であろう。「C#って面白そうだよね、だけど、何か良くわからなくて...」と言う向きも少なからずいると思われる。まず、本著でC#を味わってみていただきたい。そして、事例や例題を通じて、ソフトウェアをわかる、作れるドキドキ、ワクワク感を体験していただければと思う。その先には、プログラミングのさらに奥深い世界と、次の時代が待っているのである。
東京農工大学 大学院共生科学技術研究院 教授
並木 美太郎