2016年1月、日本のプログラマの中でも1、2を争う恵まれた肉体を持つ二人が、東京某所で会する機会がありました。お一人は、ブログ『漢のコンピュータ道』でおなじみの奥野幹也さん、もうお一人は、「握力日本一の男」として知られ、かつ皆さんご存知「Web魚拓」を運営する株式会社アフィリティーの新沼大樹さん。 お二人にそれぞれのトレーニング法、そして健康なプログラマであることへのこだわりをたっぷりと語っていただきました。
- 新沼大樹
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Web魚拓を運営する株式会社アフィリティーの代表取締役。握力王の異名を持ち、その鍛え上げられた肉体でTV、Web媒体など出演多数。バーチャロンの名プレイヤーとしても知られる
- 奥野幹也
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某大手ソフトウェア企業で、データベースのスペシャリストとして活躍中。ブログ『漢のコンピュータ道』で知られる。TwitterIDは@nippondanji
挨拶代りの「トランプちぎり」
奥野: すごい腕周りの太さですね。いま何センチくらいありますか?
新沼: 46cmでしたかね
奥野: おお... ちょっと、写真を撮らせていただいてもよろしいですか?
(ポーズをとる新沼氏)
奥野: はははは、素晴らしい。(持参したトランプを示して)お願いしてもよろしいでしょうか?
新沼: あ、じゃあやります
奥野: 朝飯前って言う感じですか?
新沼: (爆笑)... まあまあ、ちょっとやってみます。ハイ。それでは、いいすか?
(やおらトランプを引きちぎり始める。メリメリという音とともに千切れて行くトランプ)
奥野: おお~、すごい
奥野: 「最近166kgをコンスタントに閉じられるようになった」という記事を読んで
新沼: ああ、ええ。記事ありましたね。No.4 [1]
奥野: 今でも日々?
新沼:ええ、日々やってますよ
奥野: おお
新沼:筋トレしかやることなくて。本当やる事ないんですよ(笑)
(と話しながら半分にしたトランプをさらに半分に)
奥野: おお、そこまで
(もう1つのプラスチック製トランプに手を伸ばす)
新沼:これは結構、疲れる案件ですよ
[1] | No.4は米国アイアンマインド社のハンドグリッパー、キャプテンズ オブ クラッシュ(CoC)グリッパーの最上位モデル。その強度は約165kgあり、アイアンマインド社からNo.4の公認を受けたのは世界で5人だけ。新沼氏はNo.3の公認を得ている。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%97%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BA |
40歳を超えても肉体は育つ
奥野: もともと、トレーニングっていつ頃からはじめられたんですか?
新沼: 今年で、ちょうど20年目になります
奥野: 20年目ですか。すごいな
新沼: ちょうど15歳のときです
奥野: いま、体重ってどのくらいあるんですか?
新沼: いま?90kgジャストです
奥野: え、90kgですか
新沼: 夏に85kgに(減量)して大会に出る
奥野: 体重、そこまで私と変わらないくらいですね
新沼: 身長どのくらいですか?
奥野: 私は身長180くらいです
新沼: あー。大きいですね。僕178ですから。体重は90kgくらいですか?
奥野: 87kgくらいです
新沼: じゃあ同じくらいですね
奥野: そうですね。いやでも、ぜんぜん違いますよね。上半身のこの感じが...。すごいな
新沼: そう、ですかね
奥野: うーん。私ももっと続けないと駄目なんですけど、でも、いまちょうど40歳なんですよ
新沼: そうなんですね
奥野: そろそろ(筋肉が)付くペースが鈍ってくるのかなという気がしています
新沼: 最近流行の説だと、だいたい45歳くらいまでは大丈夫ですね。なんか、毎年だんだんと(年齢が)上がってきていて、結構頑張れるみたいですよ
筋トレって、スポーツとして見て安全な部類なので。足を怪我しても腕はできるし、腕を怪我しても足はできるし。なのでいつでも始められるっていうのはありますね。ちなみにどのような筋トレをされているんですか?
奥野: セルフウェイト [2] しかしていないんですよ。基本的に
新沼: 自重?
奥野: その、ごく普通のメニューしかやっていないですよ。腕立て伏せとかスクワットとか
新沼: ああ、いいじゃないですか。十分
奥野: 自重だと、床さえあればできるという感じなので
新沼: そうですね。僕もあまりにも運動不足なとき、実家に帰ったときなんかは自重でやってます
奥野: このトランプ、記念にいただいてもいいですか?
新沼: どうぞどうぞ、もちろん。
[2] | 自重(セルフウェイト):バーベルなど負荷を高める器具を使わず、自分の体重のみで行うトレーニングのこと |
高強度トレーニングのすすめ
奥野: 減量期は、有酸素(運動、以下同)とかもやられるんですか?
新沼:僕アームレスラーなので有酸素はできれば避けたいというのが… ただボディビルやるときは、有酸素運動採り入れますね。有酸素をやる利点って考えた事ありますか?「有酸素は良い」といわれていますけど、じゃあ具体的に何が良いといわれているのか?例えば、重いものを8回から20回持った後、7分後から開始する代謝と、ジョグが終わった直後の代謝と比べると、慢性的に深部体温が上がるのは前者なんです。その効果は最大で一週間くらい続くと言われていて、この効果とジョグを30分から1時間くらいやったのを比べると、明らかに重いもの持ったほうが効果が高い。深部体温が高くなるから免疫力も向上するし、あと無視できないものとして、重いものを持つときって血圧がすごい変化が激しくなって、そのときに血管が収縮と拡張を繰り返すことによって血管が筋トレできるんですよ。脳梗塞とか心筋梗塞とかの循環器系の疾患への有力な対策となるのも、高強度のトレーニングなんです
奥野: そうなんですか
新沼: ええ。ストレスとか溜まると、血管とか痛むじゃないですか
奥野: そうですね
新沼: そういうものへの対抗にもなる。なので血管のリラックスになるのは、まあ走るのが好きだったらそれが良いリラックスになると思いますけど、走るのがそんなに好きでなかったら
奥野: 負荷をもう少し上げるためにもうちょっと心臓を鍛えないと駄目だなと思って有酸素もやっていたんですけど...
新沼: 効果的に、心肺はあったほうが絶対いいです。それは絶対いいです。僕は極端に心肺が弱いので
奥野: そうなんですね
新沼: なぜか生まれつき、マラソンが最下位で短距離が一位だったりと極端なタイムを出していたんですよ
奥野: おお(笑) 速筋の
新沼: そうですね。それと面倒臭くなっちゃって(笑)。ただ、ボディビル的な意味があるときはやりますよ。インターバルトレーニングという、有酸素運動のちょっとキツイやつ。時間ダラダラやらなくていいんで。やると決めたら、ものすごい勢いでやるじゃないですか。あっちの方が性にあってますね。長い間まったりやるより
CoC No.4が登場 - 実践グリッパー講義
奥野: グリッパー、私も筋トレするようになってから挑戦しているんですけれど、全然ダメなんです
新沼: いくつまで行きました?
奥野: No.1.5閉じるので精一杯です
新沼: あー、でも強いですね。確かにNo.2辺りから憂鬱になってくるかも
奥野: 最初No.2を買ったんですけれど、全然ダメでしたね
新沼: 私も最初No.2を買いました。固いっすね、アレ
奥野: 固いですね。やっぱりステップアップするには、とにかくやり続けるしかないんですかね
新沼: 握り続けるというよりは「1回で出し切る」って考える方が。あの。結構縮むんですけど、何度も繰り返しているうちに「あ、無理だなと」思う。思うんですけれど、そこからもう少し握り込むと意外に進んだりするんです。力を付けるのはあれが大事だなと思うんです
奥野: なるほど。
新沼: ありますけどね、いま
(CoCを取り出す)
奥野: うわ凄い、No.4ですね
新沼: ひと通りあります。No.4って触ったことあります? 両手両足で閉じてみて、どの位動くかやってみてください。ただし、危険だと思ったらやめてください
奥野: (No.4を握りながら)はははは
新沼: 片手は無理です
奥野: 全然だめです。これ、ざらざらしているじゃないですか。これ皮がめくれたりしないんですか? どういう対策をすればいいんですか?
新沼: 我慢です。この痛みの方が辛いって言われてます。筋肉より。(手のひらが)足のかかとみたいに育たないと、容赦なく力を入れられないんですよ
奥野: ああ
新沼: 本能がビビっちゃうんですよね。痛いって。その本能を取っ払うには、こうやってやり続けるしかない
奥野: なるほど。やっぱり皮を鍛えないとダメないんですね。ありがとうございます
新沼: これはSですね
(と話しながら人差し指と親指でグリッパーを閉じる)
奥野: Sと言うと?それ、指1本で閉じてるんですか?指用ですか?
新沼:Sは本当にアップ用ですね。ただアップを丁寧にやらないと怪我しちゃうんで
奥野: Sで何キロなんですか?
新沼: Sは大したことない、30~40Kgくらいですね。G、S、T、1...と。1からちょっとしんどいですね。1.5は何回くらいいけますか?
奥野: 1.5は、調子がいい時にギリギリ閉じられるくらいですね
新沼: そうですか
奥野: 多分1とかで適切な刺激を...
(と話しながらグリッパーを閉じる)
新沼: あ、上手。1.5、親指使っていいですよ。閉じる前に親指をこうやって。人差し指で寄せる。これで5、6kg増すはずなんで
奥野: 閉じられないヤツでグッて握るトレーニングをしたらいいんですかね?
新沼: できればギリギリ閉じられる位のがいいんですけれど、次のレベルのハンドグリップってシンドいじゃないですか。1.5から2って大きいですよね
奥野: 指で閉じるトレーニングも意味あるんですか?
新沼: あります、あります。ありますけど、専用器具じゃないとモチベーション上がらないですよね。ちょっとしんどいですよね、これだと
奥野: 凄いマメできてますね。ちょっと触ってもいいですか? おお、すごい。やっぱこれが必要なんですね
新沼: あと、親指の付け根のコレ(と言って手のひらの筋肉を盛り上げる)
奥野: おお、すごい。スゴイ手だ。やっぱり違いますね
[3] | Sの強度は36Kg |
(Part2につづく)
- ヘルシープログラマ――プログラミングを楽しく続けるための健康Hack
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Joe Kutner 著、Sky株式会社 玉川 竜司 訳
2015年07月 発行
296ページ
ISBN978-4-87311-728-7
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