Jonさんは、春の休暇を東京で過ごすために来日中。今回はまったくのプライベート旅行ということでしたが、貴重なお休みの時間を割いてこの書籍の内容についてやご自身についていろいろとお話してくださいました。

「はじめまして」
待ち合わせの場所に現れたJonさんはいきなり日本語で挨拶。なんと1998年に3ヶ月間滋賀県の彦根市に語学留学した経験があるとのこと。簡単な会話ならOKで、ひらがな、カタカナは読めるそうです(漢字は難しいとか)。
Jonさんは5歳からプログラミングを始めたそうで、すでに20年以上のハッカー歴を持つ真のハッカー。普段は北カリフォルニアのセキュリティサービスを提供する会社で脆弱性攻撃のエキスパートとして、忙しい毎日を送っていらっしゃいます。
ハッカーというイメージにありがちな、エキセントリックな感じはまったくなく、礼儀正しく親切な好青年で、書籍の内容から想像していた人物像とは全く異なりました。
この『Hacking―The Art of Exploitation』はJonさんの処女作です。それもそのはず、Jonさんは若干27歳。この本は全編を通じて「ハッカー魂とは何か」をテーマに、真のハッカーの思想、美学、テクニックを追究し、ハッキングの真実に迫っています。システムの脆弱性やプログラム、ネットワークの弱点を利用したり、またシェルコードの挿入による攻撃方法などを詳しく紹介。侵入のテクニックが恐ろしいほどシンプルなコードとともに解説されています。後半では暗号について、そのアルゴリズムからわかりやすく、しかも簡潔に解説していて、知的好奇心を満足させてくれる一冊でもあります。さまざまな盲点を巧みに突いてシステムに侵入する手口はまさに芸術。ハッキングの真実とともにセキュリティの重要性を説く究極のセキュリティガイドです。
このようなハッカー魂を揺さぶる名著を生み出したJonさんに、いろいろと質問してみました。
―この本を書かれたきっかけは?
Jon:セキュリティ関連のカンファレンスでNo Starch Press社(原書の発刊元)の社長兼編集長のBill Pollockさんにお会いした際に話がはずみ、本を出そうということになりました。
―この本を書き上げるまでにどのくらいかかりましたか?
Jon:約1年です。
―本を書く上で苦労されたり、困ったりしたことは?
Jon:まったくありません。
―いろんな言語に翻訳されていると聞きましたが。
Jon:イタリア語、ロシア語、チェコ語、ドイツ語、韓国語、中国語、リトアニア語、ポーランド語、オランダ語、インド版の英語、日本語。あと1つあるはずだけど思い出せない…。オリジナルを含めると13ヶ国語のバージョンがあります。
―この本はなぜこんなに人気があるのだと思いますか?
Jon:ターゲットとする読者層ではないかと思います。脆弱性攻撃について技術的に興味を持っているセキュリティに携わる技術者はもちろんのこと、ほかの分野の人たちもこの本を気に入ってくれているようです。彼らはこの本をとても楽しんでくれて、口コミで宣伝してくれているみたいです。それも理由だと思います。
―この『Hacking : The Art of Exploitation』というタイトルも表紙もとても素敵ですが、これはご自分で考えたのですか?
Jon:そうです。僕がアイデアを出しました。表紙は実際にスタックを足場にしたオーバーフロー攻撃を行っている様子です。この本の中でも詳しく説明しています。
―本の中に出てくるマシンの名前が「tetsuo」というのは、これは日本のアニメ「アキラ」の登場人物から付けたのですか?
Jon:そうです。実際に僕の使っているマシンは筐体に入れずにむき出しのままで、それがAkiraの登場人物のテツオを彷彿とさせるのです。だから「tetsuo」と名付けました。Akiraは映画で見ました。
―本の中で、初めて使ったマシンがCommodore Vic-20とありましたが、これはいくつのときですか?
Jon:プログラミングをはじめたのは5歳からです。そのとき使ったはじめての言語はVIC-20 BASICでした。とはいっても最初は簡単なプログラムをコピペして、それを少し変更して……、という感じでした。そのうちいろんなことに挑戦し出しました。
―日本の読者にメッセージをお願いします。
Jon:Never stop hacking!
こちらの質問にとてもていねいに答えてくださり、また、サインにも快く応じてくださるなど、もう何から何まで格好良すぎるJonさんでした。セキュリティの若き天才の珠玉の日本語版は来月中旬に発刊される予定です。みなさんどうぞお楽しみに!
インタビュー:編集A