書籍情報

アート・オブ・コミュニティ
著者:Jono Bacon
翻訳:渋川 よしき
発売予定日:2011年05月25日
ページ数:336ページ
定価:2,940円
ISBN:978-4-87311-495-8
原書:The Art of Community
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11章: コミュニティマネージャを雇用する

「私は仕事が好きです。仕事は私の心を奪います。私は何時間でも、いすに座って仕事を見つめ続けることができます。」

ジェローム・K・ジェローム

コミュニティと一緒に仕事をしている会社(Ubuntu[1]を開発しているCanonical社)に入ったことで、同僚と同じように、私も仕事としてカンファレンスの出かけていくことができるようになりました。その結果、かつて夢に見た数々のカンファレンスに出席することができましたが、行きたいと思っていてもなかなか行くことができなかったカンファレンスもいくつかありました。

「オハイオLinuxフェスタ」もその中の一つでした。中程度の規模のコミュニティが開催するLinuxとオープンソース[2]に関するイベントです。チームのメンバーやコミュニティメンバーがそのイベントについて話をしていましたが、運命の女神のいたずらか、いつも出張や会議、休暇などが重なっていたために参加できませんでした。

しかし、2008年が始まってすぐに、そのイベントで講演して欲しいとの招待メールを受け取りました。運命の女神の横やりが入ってくることが予想できたため、自分のカレンダーにそのイベントの予定をすぐに書き込みました。カレンダーには次の文字も書き加えました。

今回こそ実現させる!

私は、是非参加させてください、と返事を出しました。主催者は親切にも、基調講演の依頼をしてくれました。招待されたのがうれしくて、喜んで引き受けました。

イベントが近づいてきたころに、プレゼンテーションを作成して基調講演の準備を行いました。このプレゼンテーションは本書の1章と2章の内容[3]に、さまざまな考えを追加した内容で、本書を書くための基礎となりました。慎重に単語を選んでスライドを作り、絶え間なく続くジョークの練習をし、すべてが輝かしい内容になるように調整を加え、可能なかぎりしっかりとしたものにしました。

脚注

[1](訳注)DellやHPなどのコンピュータメーカーにも採用されたことのある、個人向けのLinuxではトップクラスの人気を持つディストリビューション。本書の著者のジョノ・ベーコンは、世界で200を超える地域別の組織を持つ、世界でも最大規模のUbuntuコミュニティのマネージャを務めている。本書の8章では、Ubuntuコミュニティの運営体制の解説も行われている。
[2](訳注)ソフトウェアの設計である「ソースコード」を自由にアクセスできるように公開して、ソフトウェアをみんなで改善したり、自由を維持しようとする活動。インターネットの普及と共に質・量ともに拡大し、商用でも説教的に利用されるようになってきている。
[3](訳注)1章では、コミュニティを俯瞰的な視点から眺め、何が人々をコミュニティに惹きつけるのか、人々の相互作用をささえるもの、コミュニティの基本的な要素を説明している。2章では、コミュニティのデザインと、しっかりとしたコミュニティを作るためのロードマップの作り方を説明している。

今度は、運命の女神の協力を得ることができました。オハイオに降りたってカンファレンスに参加しました。イベント会場に入ると、参加すべきミーティング、議論が洪水が押し寄せてきました。参考になる、生産的な情報が得られた反面、あまり活発に活動しすぎたために、自分の基調講演の準備をする時間がありませんでした。プレゼンテーションは親切な聴衆の心には届くだろう、と思っていましたが、自分のスピーチの開始20分前まで、その部屋の圧倒的な広さを認識していませんでした。人前で話すことは珍しくなかったのですが、今回はいままでのレベルを超えていました。これほどまでに、自分のスピーチにに心配したのはこれが初めてでした。

幸い、基調講演は好意的に受け止めてもらえました。プレゼンテーションを無事に終え、壇上で自分の荷物をまとめながら、話を聞いてくれた人と話をしていました。会話が途切れると、そのチャンスをうかがっていた男性が私のところに来ました。

「ベーコンさん、初めまして。すばらしいスピーチでした。もしよろしければ、ぜひあなたの力を貸して欲しいのです」

最初の発言で意表を突かれましたが、落ち着いて詳しい話を聞いてみたところ、彼は自分の所属する独立系のソフトウェアベンダーのコミュニティマネージャを探す仕事を課されていたが、難航しており、助けを求めるためにカナダからオハイオ州に飛んできた、と説明してくれました。必要以上に深刻な物言いでしたが、コミュニティのマネジメントを取り巻く混乱や、会社とコミュニティをどのように適合させていくのかといった大きな問題があることは確かです。

コミュニティを持つ会社などの組織や、コミュニティを導く人を雇おうとしている組織にとって、彼の悩みは共感できるものです。しかし、多くの企業の場合は何を必要としていて、どのような人が必要なのかがまったく見えてため、すでにコミュニティマネージャをしている人にすがって、なんとかアドバイスや説明を受けようとしているのが現状です。

本書の10章までは、コミュニティマネージャやコミュニティリーダーを対象に、生産的でしっかりしたコミュニティを作る方法を説明してきました。そのため、これまでの章では、コミュニティマネージャを外部から連れてきたり、そのような人達を外部から応援するといった内容についての説明はありませんでしたが、最後の本章では、この課題に取り組んでいきます。

この11章ではまず、スタッフを雇おうとしている監督の立場の人について説明を行っていきますが、(a)既にコミュニティマネージャとして活動をしていて、仕事を進める上で必要なチームを会社内で作りたいと考えている人と、(b)コミュニティのニーズと期待を理解しようとしているコミュニティマネージャにとっても、価値のある内容となっています。

11.1 なぜコミュニティ構築が大きなビジネスになるのか?

「コミュニティ」という言葉は、多くの企業、とくにIT系企業ではBuzzワードとなりました。カンファレンスや、新聞、ブログ、Twitterのような世界的なムーブメントの中など、さまざまなところでコミュニティの存在を感じることができます。コミュニティに対する関心が高まった理由は3つあります。

1つには、コミュニティという言葉はポジティブな響きを持っていることです。オープン性、参加しやすさ、認知のされやすさといったイメージを持っています。お互いに与え合ったり、簡単に参加できることを表します。オープンソースの会社にとっては、自由と自主性を大切にしているという強力なメッセージを伝えることになります。そのため、クリスマスツリーのオーナメントと同じように、「コミュニティ」 という言葉が、企業のウェブサイトの上で踊っています。

2つ目は、主にソフトウェアに関する話になりますが、オープンソースへの関心の高まりにより、「オープンソース界との関わりを持つ」こととコミュニティが同義になったことです。例えば、オープンソースの企業は、家に閉じこもっていて、『バフィー 〜恋する十字架〜』[4]のポスターを貼っているようなコンピュータマニアとの繋がりが重要であることに気づいていました。彼らの作る品質の高いソフトウェアは世界中で使用され、世界に影響を与えています。外部の開発者が自由にソースコードを作成して貢献できるようなオープンソースの特性を持つコミュニティにとっては、彼らの能力を買ったり、影響力を買うことはとても重要であると認知されています。彼らこそが、オープンソースの文化やコミュニティに期待されるような、技術的な品質を持つ価値を生み出し続ける本当の顧客です。企業がオープンソースと、それに関わる価値を抱き込もうとすると、彼らのような、コミュニティの中にいる大きな猫[5]の意向に合わせる必要があります。

最後は、厳しい景気情勢における、中小企業の経済的な理由です。経営者たちは、痛みを伴いつつも自分達のゴールを達成するにはどうすれば良いのか、といった再評価を強いられました。マーケティングとエンジニアリングに関わる人を何人も雇うよりも、コミュニティマネージャを1人雇い、コミュニティを通じて宣伝・サポート・開発を行う方がリーズナブルです。

これらの理由から、ビジネス環境でもコミュニティや、コミュニティを作る人に対する期待が高まっています。

脚注

[4](訳注)アメリカの人気テレビドラマ。日本の「深夜アニメは接待ゴルフのようなもの」と似たようなメンタリティと考えられる。
[5](訳注)コミュニティメンバーは好きで集まっているため、コミュニティメンバーをマネジメントする仕事は「猫を集めるようなこと」と書籍内の「はじめに」で説明されている。

コラム: 間違ったコミュニティ観を正す

(a)コミュニティの概要を理解しようとしている人と、(b)コミュニティを作りたいと考える人や、作った経験のある人の話には、よくずれが生じます。

かつては固有用語であったものの、その後は一般名詞として定着した言葉があります。アスピリン、掃除機(Hoover)、セロハン、魔法瓶(Thermos)、ヘロインなどの言葉は、かつてはさまざまな企業の商標でした。例えば、イギリスでは多くの人が、掃除機のことを「hoover」と呼びます。しかし、「hoover」は高い品質を持つ掃除機に対する期待を意味するようになりました。その時から、「hoover」の商標は一般化され、Hoover社製の掃除機とは似つかないようなものも、「hoover」と呼ばれるようになりました。

コミュニティマネージャは、これと似たような、観点のずれという名のリスクと向き合うことになります。アカデミックな学術的な理論ばかりを見て、日々の現場の活動を軽んじるのは間違いです。逆に、コミュニティマネージャが現場の視点だけしか持たないと、「共通の興味を持つグループ向けの理論」として一般化されすぎたマネジメントになってしまいます。その結果、実際のコミュニティ構築にベストプラクティスを導入したり、計測を行って改善していく活動が阻害されます。バランスが重要です。

もし、コミュニティマネージャの役割を外部の人に任せようとしているのであれば、この観点のずれと、それが候補者に及ぼす影響に気づく必要があります。それを避けるためには、実際に普段から行っている日々の活動、達成した内容、行ってきた努力などを見るようにします。日々の作業に対して、理屈や社会科学的な回答が多くされるようであれば警戒が必要です。


11.2 企業における、コミュニティマネージャの役割

近年、コミュニティマネジメントと組織の協調が必要であると、テレビの中でさかんに言われています。マーケティング部門やエンジニアリング部門[6]は報告先として適切でしょうか? コミュニティマネージャは、マーケティング部の部長やCTOへの報告が必要でしょうか? 外部からコミュニティマネージャを採用してくるとして、すばらしいコミュニティを作り上げるには、どちらのチームの方が、コミュニティマネージャを適切にサポートできるでしょうか?

脚注

[6](訳注)ここでは、企業としてオープンソースでソフトウェア開発するケースを想定した説明になっている。ソフトウェア以外のサービスや製品などをユーザと作り上げたい場合には、以降の説明を適宜それらを担当している部署と読み替えてほしい。

私は、コミュニティマネジメントを行うには、マーケティングとエンジニアリングの両方が筋書きを作る必要があると考えています。もし片方が欠けると、コミュニティのバランスは崩れ、ゆがめられ、効率が下がります。マーケティングの立場からコミュニティイベントを行ったり、露出する機会を常に探さなければなりませんが、エンジニアリングの立場からコミュニティの技術的な基盤を強化する気がないのであれば何の意味もありません。

コミュニティマネージャになる人に必要な資質は、オープンソースのコミュニティでコラボレーションするときのメカニズムや技術的/社会的基盤に通じていて、戦略的に体制を作り、コミュニティがすばらしい仕事を行えるようにするという目標に向かって進んでいけることです。そのため、コミュニティマネージャを雇う場合には、技術面のリーダーと、マーケティング部門の両方と密にコミュニケーションがとれるように配慮します。

11.2.1 期待値を決める

新任のコミュニティマネージャ向けの業務指示書を書く前に、役割に期待することを明確にします。コミュニティのマネジメントは、ゴールが分かりにくく、難しい仕事です。コミュニティマネージャに間違った期待をした結果、コミュニティ構築に適切な人材を捜すのに失敗し、多額の損失を計上してしまった会社は数多くあります。

昔から会社の中にあって、役割と期待が明確になっている役職とは異なり、コミュニティのマネジメントにはあいまいな部分も多いため、コミュニティマネージャの採用で混乱が生じます。

11.2.2 役割のスコープ

採用担当者が、すでに多くの仕事をこなしていて忙しい場合には、コミュニティを理解することの重要さに気づきにくいため、コミュニティマネージャに不合理な役割を期待してしまうことがあります。業務の指示が検討外れだと、仮に候補者が見つかったとしても、役割を果たすのに大変な苦労が必要となります。運良く、打たれ強くて、役割が明確になるまでじっと我慢してくれるようなタフな候補者が見つかれば、時間をかけて試行錯誤しながら正しい道を発見することができます。しかし、役割の調整は多くの候補者にとってストレスを感じさせますし、会社にとっても大きな損害となります。

役割のスコープを理解するためには、最初に(a)コミュニティのスコープを理解し、(b)期待していることを明確にして、コミュニティに貢献する人が仕事をしやすい環境を作る必要があります。下記の質問集に答えると、この2つのポイントがはっきりして、仕事の指示書を作ったり、コミュニティ自身のスコープを定めるのが簡単になります。

  • どのような人がコミュニティにいますか?
  • コミュニティの規模はどのぐらいですか?
  • コミュニティにはどのようなスキルを持った人がいますか? どのような多様性がありますか?
  • コミュニティと組織の間には、どのぐらいの頻度でやりとりがありますか?どのような活動を一緒に行っていますか?
  • どのような種類の運営のインフラが整備されていますか?
  • 議論好きな人はいますか?また、炎上しやすいトピックは何ですか?

これらの質問に答えていくと、コミュニティマネジメントに何を期待するのかが見えてきます。加えて、下記の質問から将来の方向性が評価できます。

  • コミュニティに参加している人をより理解していくためには何をしたいですか?
  • コミュニティで必要とされる主要なスキルを成長させ、役割を多様化させるには何をしたいですか?
  • コミュニティが企業と共同で行っている作業を、どのように変更したり改善したいですか?何にフォーカスしたいですか?
  • どのような運営の仕組みが必要だと考えますか?どこを改善する必要があると考えますか?最初にフォーカスすべき箇所はどこですか?
  • コミュニティ内の議論好きな人達との関係を改善するには何をしたいですか?

新しいコミュニティマネージャを探す時に必要な、大きな視点でのゴールがなければ、これらの質問にすべて答えることはできません。新しいコミュニティマネージャ候補へのサポートを確実に行っていくためには、これらのゴールを組織の他のメンバーとも共有する必要があります。また、フィードバックを受けることで、これらのゴールや期待をさらに洗練させることができます。

このゴールと期待から、マネージャに対する完全な戦略を導き出すことができます。これについては、本章のすぐ後の節で説明します。

11.2.3 リスク

コミュニティマネージャを外部から呼んで仕事をしてもらうことのリスクも明確にする必要があります。コミュニティマネージャを雇用することは、コミュニティだけではなく、組織を代表する、公の顔となる人を雇うことです。正しい人選が行われると、お互いに対する強力なコミットメントとなり、生産的で継続される関係を構築し、長い間維持することができます。人選を間違うと、全世界に対して恥ずかしい思いをすることになります。

誰かがコミュニティを代表することになると、その人は組織とコミュニティの間の微妙な舵取りをすることになります。組織とコミュニティの期待のバランスを取り、お互いに最高の利益が出るように、慎重に役割を演じなければなりません。

この責任には、組織とコミュニティの両方から失望されてしまうリスクがあります。組織側に混乱の原因がある場合は、マネージャーは職を去り、コミュニティ内部で暗躍して復讐を果たしたいと思うかもしれません。コミュニティ側が原因の場合は、燃え尽き症候群になってしまい、後を引くような傷跡をコミュニティと組織に残すことになります。燃え尽き症候群については、9章[7]の最後で説明を行いました。

コミュニティマネージャの役割を担ってもらう人を雇う時は、最大級の注意を払う必要があります。監督者とコミュニティマネージャは、専門的で正しい方法でこれらのリスクを対処していく必要があります。そのためにも、コミュニティよりも自分の予定を先に説明するような自分勝手な人ではなく、黙っていても自然に信用される人でなければなりません。

脚注

[7](訳注)9章では、対立の解消や燃え尽き症候群など、コミュティの活動を阻害する要因の解決についての解説が行われた。

11.2.4 型を破る

もう一つ受け入れなければならないことは、コミュニティマネージャは、今までのビジネス界の型を破って道を切り拓く必要があることです。コミュニティマネージャが、コミュニティと信頼を築くには、コミュニティのメンバーの一員となり、コミュニティの文化に染まる必要がありますが、それは従来の組織の文化と相容れない可能性があります。

これらの多くは、コミュニティのマネジメントを行う上で、一見重要ではない要素に見えます。例えば、多くのボランティアのコミュニティは、カジュアルな場所で行われます。そのため、参加者はカジュアルな服装でいることが多いですが、監督者はコミュニティマネージャもそれと同じような服装をすることを想定しなければなりません。また、コミュニティマネージャの多くは、声が大きく、自分の意見をたくさん持っています。このような性格はコミュニティにエネルギーを注入して盛り上げるのに必要です。カンファレンスでは刺激的で活発なプレゼンテーションをしますし、ノートパソコンの天板はステッカーでいっぱいになります。また、インタビューではさまざまなことをべらべらとしゃべります。雇用したのがこのようなタイプの人であっても驚かないようにしてください。

私自身もこのような仕事にぴったりの性格です。私のコミュニティのメンバーは、私がヘビーメタルが好きで、声が大きく、ジョークでいっぱいのプレゼンテーションが好きで、コミュニティメンバーと率直な議論をすることを知っています。私は、自分自身の仕事に対する取り組みに誇りをもっています。コミュニティマネージャを雇用するのであれば、その役割に必要な個性を十分に発揮できる自由を保証する必要があります。これはどのコミュニティにも共通することです。

とはいえ、もちろん守るべき一線はあります。もしもコミュニティマネージャに対する猛烈な抗議を受け取った場合には、コミュニティマネージャが軸足を置き違えているか、誰かを傷つけたり、一線を越えたり、コミュニティ、会社を混乱させたり、自分自身が見えなくなっている可能性があります。

このことをきちんと想定しておく必要があります。コミュニティマネージャであれば誰でも、ふとしたタイミングで一線を越えてしまうことがあります。コミュニティマネージャの仕事に就いた一年目には何かが起きるものです。もし何かが発生したら、一緒に議論をする場を設けて、どこに一線を引くか、どのように将来起きうる問題を避けるのかを議論してください。誠実で隠し事のない議論をすることで、組織として許容範囲外の行動がお互いに明確になり、コミュニティマネージャと雇用側の信頼関係も築くことができます。

11.2.5 統制と報告

雇用側が想定しなければならない最後の項目は、コミュニティマネージャの会社における立場です。本章の前半で、コミュニティマネージャの役割を成し遂げるには、マーケティングとエンジニアリングの両方のアプローチが必要であると説明しました。これについて考慮する必要があります。

本章の最初で行った役割範囲についての説明を振り返り、監督であるあなたが設定した範囲を超えて、コミュニティマネージャが自主的に、コラボレーションのためのインフラやプロセス、コミュニティの成長を指揮できるようにするかどうかを決定してください。他の言い方をすると、監督者としてコミュニティマネージャに対して期待する仕事が、カンファレンスで顧客やジャーナリストに対してコミュニティや会社について説明することなのか、あるいはコミュニティの成長、構築、方針転換、最適化といった活動をすることなのか、ということです。

質問の答えが「マーケティングとエンジニアリングの両方」である場合は、普段、主にフォーカスするのはどちらかであるかを考える必要があります。もしコミュニティマネージャが主に、オープンソースのソフトウェアを作るコミュニティを運営しているのであれば、コミュニティマネージャはエンジニアリング部門のマネージャの元で仕事をするべきです。世界中で行われるカンファレンスや展示会などに参加して、コミュニティを代表して対外的な発表をして欲しいと考えているのであれば、マーケティング部門の所属として、コミュニティマネージャとは違う肩書きを付けてください。この後者の仕事の場合、彼の仕事はマネジメントではなく、コミュニティの代表であるため、コミュニティメンバーがマネジメントを期待してがっかりすることが減ります。

変化させる能力

組織の中のどの部門にコミュニティマネージャを配置するかによって、どの程度まで細かく管理する必要があるのかが決まります。この問題は複雑ですが、コミュニティマネージャを雇用する多くの人にとっては考えざるをえない問題です。多くの場合、コミュニティの情報を組織に知らせることには成功しても、必要な変更を組織に与える権限や機会が得られないことがよくあります。

例えば、コミュニティマネージャがコミュニティの技術的なワークフローの改善を提案したとします。これらの改善には技術的な変更や、組織の他の部門のエンジニアリングのリソースが必要となります。どの部門にも相談せずにコミュニティマネージャが必要な変更の巨大なリストを自分の中にだけかかえてしまっている場合には、それらの変更が実行されることはありません。エンジニアも自分自身がフォーカスすべき作業のリストを持っているため、それへの影響を避けるためにコミュニティマネージャの提案が修正されてしまうこともあります。

この妨害を防ぐためには、コミュニティの仕事に関係する範囲内で、組織側にも変更を加えたり、改良する権限をコミュニティマネージャに与える必要があります。コミュニティマネージャに対して必要な情報をエンジニアリングチームから報告させることは期待できないため、新しい戦略計画や戦略サイクルを考える上で必要な情報を収集している時には、コミュニティの変更と必要なことの優先順位をエンジニアリングマネージャが付けるようにします。

マネージャたちの承認をもらい、横断的な特別なチームを作るのも良い方法です。この小さなチームは、組織内のさまざまなグループに関連する問題を解決するために働くタスクフォースです。例えば、ソースコード管理システムとウェブサイトにまたがる、エンジニアリングの範囲で問題があったとします。この場合は、コミュニティマネージャ、ソースコード管理を代表するメンバー、ウェブサイトを代表するメンバーを集めます。一緒にこの複合的な問題に取り組むことの合意を形成し、マネージャに対して、これらの問題の優先順位を定期的に議論することの承認を得ます。

11.2.6 コミュニティに従事する責任

コミュニティマネージャが就任した後に、組織とコミュニティの間のやりとりをどの程度行うことが期待されるかも考慮すべきです。ほとんどの組織は、コミュニティマネージャを雇用すると、他のチームに代わってコミュニティマネージャがすべてのコミュニティとのやりとりを行うと誤解しています。例えば、とある製品を開発する部門がソフトウェアの会社内にあったとします。その部門は、コミュニティの成長やコミュニティとのやりとりなど、コミュニティに関わるすべてのことはコミュニティマネージャが行うと期待します。

監督者は、コミュニティマネージャに対して、組織におけるコミュニティとの直接のやりとりを行う役割と、組織内の部門が直接コミュニティとやりとりを行うのをサポートするコンサルタントの役割のどちらを担ってもらうかを決め、組織とコミュニティの両方に対して、コミュニティマネージャの役割をきちんと伝える必要があります。

私が推奨するのは、組織内の各チームが直接コミュニティとのやりとりを行い、コミュニティマネージャはそれらのチームに対するコンサルティングを行う方法です。コミュニティマネージャが伝言ゲームをするよりも、現場の人が直接対応することでコミュニティとのやりとりの品質が上がりますし、コミュニティと組織が交流する文化も創ることができます。また、この方法には規模の拡大に強いというメリットもあります。一人の人がコミュニティの代表として行動すると、その人が徐々にボトルネックとなってきます。

11.2.7 給料

コミュニティマネージャの雇用に関する難しい話題が給料です。理由は簡単です。そのような役割は多くの組織には未知の物であり、どの程度の給料が期待されるのか、市場価格はどうなっているのかを知ることが難しいからです。

残念ながら、多くの組織の人事部では、あまり適切ではない情報を集めようとします。例えば、求人サイトで「コミュニティマネージャ」というキーワードで検索すると、平均的な給与を知ることができます。しかし、これらの情報は使えないものばかりです。

理由としては、「コミュニティマネージャ」という用語にはさまざまな種類の組織の、さまざまな種類の責任範囲の、さまざまな種類の仕事が含まれているからです。私の知り合いにも、非営利の慈善団体の一員として、30人未満の小さなコミュニティのマネージャをしている知人がいます。また、とても複雑な共同作業を行い、技術的なワークフローが整備された、数十万人の人が参加する巨大なコミュニティで、公人としての責任を持っているコミュニティマネージャの知人もいます。これらの仕事はタイプが異なるので、同じ給与で働いてくれることを期待してはなりません。

また、もう一つ考慮すべきなのは、「コミュニティマネージャ」という言葉の「マネージャ」の部分です。コミュニティマネージャの多くは、実際には誰の管理もしません。肩書きの「マネージャ」は、コミュニティに対する影響力の大きさを表します。例えば、私の現在の役割は、コミュニティ内のさまざまな分野を担当する複数人のコミュニティマネージャを統括する仕事をしています。私は成長中の大きなコミュニティに対する影響力を持っています。そのため、伝統的な意味での管理責任があります。給料の決定には、このような管理の役割の有無が反映される必要があります。

残念ながら、私がコミュニティマネジメントの役割において、給与の面でできるアドバイスは限られています。決定には、市場(需要と供給)の認識と、そこから導き出せる金額が必要となります。私は以前、給料について何社かにアドバイスをしたことがあります。もし自信がなければ、自分のコミュニティに近いコミュニティを調査し、コミュニティマネージャを以前雇用したことがある組織のマネージャに相談するか、私に相談してください。あなたの会社にとっても、コミュニティマネージャにとっても、説得力があり、公平な金額を導くことができるはずです。

11.2.8 候補者に対して期待していることを話す

組織が期待することについて説明してきました。次に、コミュニティマネージャの候補者に対する対応を説明していきます。面談で、候補者は、役割に期待されること、どのようなことをしていきたいと考えているのか、どのように日々の時間を使っていくのかといったことを聞かれます。これらの気持ちは役割を果たすための核となります。

これ以外にも、トラブルを避けるために、きちんと線引きをしておかなければならない項目がいくつかあります。次のリストを見て、コミュニティマネージャの役割として、必要な項目かどうかを判断してください。必要であれば、面接の中で候補者に説明して、調整します。

役割の調整

組織内のコミュニティマネージャの役割は、調整や成長、変化によって2段階の変化を受けます。1つは、コミュニティについて多くを学んだことでコミュニティの管理方法が変わったり、会社の成長や縮小などの理由による変化です。コミュニティの戦略ドキュメントに書かれた内容も時間と共に変化します。コミュニティマネージャは、この2つの領域の変化に柔軟である必要があります。

不規則な時間

インターネットで繋がり、複数の国にまたがっているコミュニティは数多くあります。このため、コミュニティマネージャは不規則な時間に仕事しなければならないこともあります。特にオンラインの会議やイベントを計画している場合は日常的に発生します。なるべく多くの世界中に分散しているコミュニティメンバーがミーティングに参加できるようにするために、夜中に会議に参加しなければならないコミュニティマネージャもいます。このような意志があるかどうかを確認します。

出張

カンファレンスやスプリント[8]、その他のイベントなど、出張する機会が多くなります。旅するのが好きで、喜んで参加する人もいれば、家族やパートナーのことを考慮しなければならない人もいます。また結婚や出産などにより環境が変わることもあります。候補者が、今は出張に行くのをいとわなかったとしても、将来変わることがあることを想定しなければなりません。

多くの人の注目を浴びる

コミュニティマネージャは、会社を代表して人前に出ることが多くなります。このことを候補者に期待しているかどうかを明らかにする必要があります。人前に出る場合、インタビューやパネルなどで、厳しい質問に耐える覚悟が必要となります。人前に出ることをコミュニティマネージャに期待しているのであれば、コミュニティマネージャはこの役割を果たさなければなりませんし、組織側でも広範囲にわたる最大限のサポートを行う必要があります。

対立の解決

コミュニティマネージャの役割には、対立や論争をいさめることも含まれます。このことに関わりたくないと思っている人もいます。対立の解決についての詳細は「9章 対立への対処」で説明しています。

技術的な知識

技術よりのテーマを扱うコミュニティでは、ワークフローやインフラ、コミュニティ内で共同作業する際の技術的なプロセスなど、広範囲にわたる技術的な経験を持つコミュニティマネージャが必要となります。コミュニティの成長や変化に関わるためには、これらの技術的なスキルが必要であることを候補者に明示します。コミュニティマネージャの候補者はこれらの概念やスキルを学習することが期待されます。

プレゼンテーションのスキル

コミュニティマネージャになると、多くのカンファレンスを回り、自分の仕事についてプレゼンテーションを行う機会が増えます。コミュニティマネージャの候補者が、プレゼンテーションをするのが苦でないか、プレゼンテーションが得意かどうかもチェックする必要があります。ひどいプレゼンテーションをするよりも、プレゼンテーションをしないことの方がましなこともあります。その場合はプレゼンテーションを行う役割は他の人に渡したいと思うかもしれません。

これらの項目も面接時の質問リストに入れます。コミュニティマネージャに期待する仕事は明確にして、将来発生しうる課題をあやふやにしないようにします。また、将来参照できるように、ドキュメントとして残すべきです。ドキュメント作成は、あなたと、あなたの部門の責任です。契約の中にこれらの条項を入れることもできますし、契約とは別に、業務のための付帯文書の中に入れることもできます。

脚注

[8](訳注)どちらも、「10章 イベントの開催と運営」で説明されている、物理的なイベントの種類。カンファレンスは、スピーカーがプレゼンテーションをして、参加者が聴講するスタイルのイベント。スプリントは、普段はネット上で活動しているメンバー同士が同じ場所に集まって集中的に活動を行うイベントで、開発合宿とも言われる。10章では、これ以外にもサミット(会議形式)、コンベンション(ファンの集い)、リリースパーティーが紹介されている。

11.3 コミュニティマネージャをマネージする

コミュニティマネージャの役割を担ってくれる人を組織に雇い入れたら、なるべく効率良くスムーズにその仕事に定着してもらうことが次のステップになります。本屋には、人の雇用と定着に関する書籍が数多く並んでいますが、ここでは、コミュニティマネージャに限定したヒントを紹介します。

私が以前、コミュニティの運営のために人を雇った時は、プロセスを次の3つの領域に分割しました。

スタートアップ

組織に人が参加した時は最初の一ヶ月が重要になります。特にコミュニティの管理に関わるチームの場合は重要です。

戦略

これは、同意された目的の定義をどのようにやるかを定め、どこに努力を集中するかを明らかにするものです。

管理とコミュニケーション

コミュニティマネージャの監督に関する週次で行う項目です。

すぐに、これら特性に関わる3つについて調査しましょう。もう一度言いますが、これらはコミュニティマネージャにのみ関する領域です。新入社員が組織に加わる時に考慮されるベストプラクティスの項目群に、このコミュニティマネージャに限定した3つの単語を追加します。

Note

本章では、コミュニティマネージャを監督する立場からのアドバイスを提供しています。これらの情報は、コミュニティマネージャを雇用して監督する必要のある人には役に立ちます。しかし、本章の最初で説明した通り、コミュニティマネージャとして働こうとしている場合には、本章の内容は監督者に説明するのに使用することができます。

11.3.1 スタートアップ

コミュニティマネージャが組織に初めて加わる時は、スタートアップの項目をきちんと網羅する必要があります。これには、Eメールアドレス、会社のリソースの利用方法、カレンダーの作成などが含まれます。これらは重要ですが、あまり興味の対象になるものではありませんが、コミュニティマネージャがこのスタートアップの期間を十分に生かして活動をすることは、組織とコミュニティの中の評判を決定づけるため重要です。

組織内部での理解

コミュニティのマネジメントにおいて大切なのは、周辺からの理解です。組織側の人からは、コミュニティマネージャはコミュニティメンバーの考えや視点、気づきや、どのように行動するのかをすべて把握している人とみなされます。多くの人はコミュニティがどのように行動しているのかを理解していません。そのため、コミュニティマネージャは、一見ランダムに動いているようなこのコミュニティの動きを、組織の他の部門の人に理解してもらうための通訳として仕事をすることになります。

このことを念頭に置くと、コミュニティマネージャの組織内での立ち位置を慎重に決定する必要があります。これにはいくつかの理由があります。コミュニティマネージャは、近い将来、組織の他の部門の人と一緒に協業する方法を知らなければならなくなりますし、コミュニティ内でもさまざまな要求や挑戦に立ち向かっていくことになります。組織の他の部門にタスクが割り振られて、仕事が行われることもあります。

このような橋を造るもう一つの重要な理由は、組織がコミュニティマネージャの活動を理解する手助けをすることです。新しくて未知の役割があっても、役割の目的を理解しようとしなかったり、皮肉っぽく誤解する人もいます。「コミュニティマネージメント? オタクとつるんでブログを書く仕事でしょ」という言葉を言う人もいます。

コミュニティマネージャの役割に含まれていることをはっきりさせて、まわりの人に理解してもらうことはとても大切です。コミュニティマネージャと、組織内の他の部門のマネージャが出席する会議や電話会議を開催し、コミュニティマネージャの仕事に関係のあるテーマの議論を行うと理解が深まります。

コミュニティの理解

コミュニティに対しての仕事をするために雇用されたコミュニティマネージャにとって極めて重要なのが、コミュニティの理解です。一番最初にフォーカスすべき仕事は、コミュニティにきちんと理解してもらい、支持してもらうことです。

すでにそのコミュニティ内で活躍している人を雇用するのであれば、すでに十分な理解が得られていることもあります。そうでなければ、時間をとってコミュニティに参加し、コミュニティに理解してもらえるように努力する必要があります。これには次のようなアプローチがあります。

コミュニケーションチャンネルへの参加

コミュニティマネージャはメーリングリストやフォーラムなどのコミュニケーションチャンネルに参加すべきです。ただ参加するだけではなく、自分への呼びかけに対応したり、議論に加わります。

ブログ

ブログやオンラインの記事をよく読んでくれそうなコミュニティであれば、コミュニティマネージャは自分の仕事について、積極的に書くべきです。ブログは、どのような努力をしていいるか、どこで仕事をしているか、コミュニティが何を得たのかを説明する上で、とてもすぐれた媒体です。

物理的なイベントへの参加

コミュニティに参加する幅広い人に対して理解してもらうには、コミュニティが大事にしているイベントに参加し、プレゼンテーションをする必要があります。物理的なイベントは、コミュニティの重要なメンバーとのコネクションを作り、お互いに理解するための最高の機会です。

コミュニティマネージャがコミュニティの理解を得るために、コミュニティマネージャに本書の他の章も読むように言うことをすすめます。特に、コミュニティメンバーを巻き込んで、一緒に大きな活動をする方法について紹介した6章の「Buzzの波を起こす」[9]は参考になるでしょう。

脚注

[9](訳注)6章では、メンバーにやる気に火を付けて、大きなムーブメントを作るためのTipsなどを説明した。

コラム: 物理的なイベントへの参加のしすぎに注意

若葉マークのコミュニティマネージャや、組織として働くコミュニティマネージャがやりがちな間違いがあります。プレスリリースと宣伝を行った後に、組織から、コミュニティの理解を得るためにありとあらゆる会議に出席するように言われます。

このような業務指示は、コミュニティや外部の組織との関係を築くにはとても良いのですが、時間とお金に関して高く付きます。金銭的なコストと私生活の影響を除いたとしても、イベントに参加し続けることで、Eメールや電話での対応や会議の開催などの日常業務をこなすことはできなくなります。いつもの仕事を一貫してきちんとこなすことは、コミュニティ運営の基礎として大切です。

そのため、コミュニティマネージャがイベントに出席しすぎないようにします。コミュニティマネージャの価値は、コミュニティを着実に運営することです。会議の出席のために、運営をおろそかにしてはなりません。


11.3.2 戦略

コミュニティマネージャが組織に所属し、コミュニティマネージャとしての任期がスタートする時には、戦略的な優先順位を決めておかなければなりません。コミュニティマネージャの責任について説明する戦略ドキュメントを作成します。2章では、コミュニティを作る準備としてコミュニティの目的を明確にして、どのような機会をコミュニティメンバーに与えるのか、どのようなスキルが必要なのかといったことをまとめ、最終的に目的、目標、達成基準で構成される戦略計画を作成しました。このドキュメントも戦略計画と同様に、目的、目標、達成基準で構成されます。この文書は、組織として期待することを文章の形式にまとめたものであり、コミュニティマネージャが何に対して働くべきかを伝えるものです。

この戦略計画は組織の全従業員に対しても価値のあるドキュメントです。もちろん、仕事の範囲を決めることになるため、この文書が一番役に立つのはコミュニティマネージャです。大きく活発なコミュニティの場合は、コミュニティマネージャが知らなければならない情報は膨大になります。そのため、監督者とコミュニティマネージャがフォーカスすべき目的と目標を選択し、優先順位を付けることが重要です。

コミュニティマネージャを組織に加える時は、「2章 コミュニティ計画」で作成した戦略計画を提供します。それぞれの目的についての同意を得たら、それを目標に分割してコミュニティマネージャのタスクの中に編み込んでいきます。戦略計画があると、進捗を把握するのも簡単になります。

11.3.3 管理とコミュニケーション

コミュニティマネージャに対しても、組織の従業員に対して定期的に行っているのと同じような管理と確認を行う必要があります。他の従業員の管理にも使う一般的な方法を、コミュニティマネージャに対しても適用することもできますが、ここではコミュニティマネージャの管理を行う上で考慮すべきことを紹介します。

これらの考慮すべきことは、どのようにコミュニティマネージャと組織内の他の部門が一緒に働くかや、どのようにコミュニティマネージャが情報をチームにもたらすかに依存します。主に次の2つのことに焦点を定めることができます。

毎週の進捗確認

着実に達成している目標がどれかを確認したり、目標の達成の障害となっているものをすばやく特定するために、コミュニティマネージャは週ごとに組織の中の部門と仕事をします。毎週違う部署と仕事をすることもあります。

コミュニティのフィードバック

コミュニティマネージャは、コミュニティのフィードバックや意見を集約し組織に伝える耳です。「組織へのフィードバック」という項目をコミュニティマネージャの仕事のワークフローにも入れるようにします。

次に、これらの項目の詳細について説明します。

毎週の進捗確認

コミュニティマネージャが組織に加わると、定期的に次のようなテーマの相談や会議が開催されるようになります。

フォーカスする領域

現時点で、コミュニティマネージャが注意を集中すべきトピックや領域に関する議論です。

戦略のレビュー

ミーティングをするたびに、戦略ドキュメントと、そこから導き出されるコミュニティマネージャ自身のゴールをレビューし、進捗を確認します。これは、推進の障害となっている問題の確認をする最高の機会であるため、定期的に行うようにします。

機会

定期的に、現在あるいは次のイテレーションで、集中して活動したいと思う新しい機会や領域についてのオープンな議論を行います。

問題と懸念

監督者は、コミュニティマネージャの仕事を妨げているような課題、問題、懸念について常にコミュニケーションする必要があります。比較的簡単な課題であることが多いため、監督者が解決の手助けをすることができるでしょう。

コミュニティの問題と懸念

コミュニティ内での働きや指導力に問題がないかチェックする必要があります。仕事を妨げているコミュニティメンバーはいますか? 監督者がコミュニティマネージャの手助けをするのに、懸念や問題はあるでしょうか?

監督者とコミュニティマネージャの二人だけの会議に加えて、毎週の定例ミーティングに参加して、コミュニティマネージャと情報交換してもらう部門を決定します。組織の複数の部門との橋渡しとなるチームを作ることもできます。幅広いチームのメンバーを集めることができると、製品のエンジニアリング部門とコミュニティマネージャ間の情報の流れをスムーズにできます。

最後になりますが、監督者はコミュニティマネージャに対して、マーケティング部門や経営陣、もしくはコミュニティが関係するプロジェクトに従事する特定の部門など、定例会以外にも情報交換を毎週すべき人についてアドバイスします。

コミュニティフィードバック

コミュニティマネージャが組織に加わったら、コミュニティマネージャが組織の主要メンバーにコミュニティからのフィードバックを伝えられるように全力でサポートしなければなりません。コミュニティマネージャはコミュニティとの第一の接点です。コミュニティマネージャはコミュニティから得られた情報、意見、関心、心配などのさまざまな有益なフィードバックを持っていると考える必要があります。これらのフィードバックを正しい耳に届けるようにする必要があります。

これを簡単に実現する方法は、フィードバックを行うべき先をコミュニティマネージャに知らせることです。新しくコミュニティマネージャが組織に加わる場合、これは簡単ではないタスクです。特に、組織が大きくて複雑な階層構造を持っている場合には難しくなります。話題ごとに直接コンタクトを取るべき相手のリストを作成して渡します。また、誰にフィードバックを伝えるべきかはっきりしない場合には、監督者に気軽に相談できるようにします。

11.4 まとめ

本章では、コミュニティマネージャを雇用して、企業などの組織と一緒に仕事をしてもらうことに関するさまざまなトピックを説明しました。コミュニティマネージャに期待することを明文化する方法や、コミュティマネージャの役割を組織に組み入れる方法、コミュニティマネージャと組織を同じ方向を向くように維持するための計測可能な戦略をそれぞれ説明してきました。これらのステップを着実にこなしたとしても、まだまだ未知のものに遭遇することを覚悟していなければなりません。

コミュニティのマネジメントは、まだ非常に若い職業です。コミュニティの管理が、企業などの組織にとって一般的な仕事となってくるにつれて、本書のアート・オブ・コミュニティの新しい版を出していきたいと思っています。その際には、もっと多くのアドバイスを入れ、本章をより強固なものにしていきたいと考えています。

幸い、私がここで提供した情報があれば、すばらしいスタートを切ることができます。この情報に雇用する側の監督者の経験や、コミュニティマネージャからの言葉を加えていくこと、間違いなく全員が正しく歩き始められるようになります。