(承前) LL Futureの会場近くでインタビューに答えて下さったラリーさん。後編ではPerl 6に盛り込まれる「ドメイン指向言語」に関する考え方や、次の『プログラミングPerl』についてもお話いただいております。
Q. あなたとmatzさんはプログラミング言語が自然言語に近づいていく、という点で同意していましたね。
A. 「自然言語」という言葉にはいくつもの意味があります。自然言語というものは我々にとってとても大きな存在で、人間のように高度な知性が必要で、会話のような行為を可能にします。
それらの属性は、いずれも精神的な構造の持ち主が行うことで、もしそんなことができれば、本当にコミュニケートできようにさえなります。人々が会話できるくらいスマートになるというのは、我々にとっては大きなことでしょう。彼らは「何が必要ですか?」と話し出すようになるに違いありません。
(しかし、)コンピュータはそんなことができるには遠く及びませんし、実際に「何がご入り用ですか?」とは言いません。私たちはコンピュータをそんな風には見ていませんし、(実際に)そんな風でもありません。
そう、自然言語のやり方を学ぼうとすること、それが私の仕事ですが、それはある種の原則、つまり実際に機能する自然言語をコンピュータの言語に移植する原則を見つけることです。
私たちには多くの機能がる訳ではありませんが、自然言語のパワフルな様相を備えています。それはスケーラビリティであったり、ポリモーフィズムのように結果を得られる能力。ダイナミックに、さまざまな場所で、実行可能な新しい言語を作りだす手段です。
例を挙げます。私たちは現実に存在する工場で働いていて、そこでは特定の言葉を使って話をしているとします。この工場での「言葉」は、工場の外部の人には理解できないたぐいのものかもしれません。こんな風に、私たちはそれぞれ異なる複数の言葉を使い分けています。これがドメイン指向言語(Domain Specific Language)です。私たちはこのようなことを自然言語でも行っているのです。
一方で私たちは、(同じ言葉を使って)工場で会話をしたり、ゲイシャに話しかけたりするように。言語に通底する基盤を共有してもいます。
Q. 言語学を学んだことは、Perlにとって有益でしたか?
いろいろな言語の歴史について知ったことは、言語設計者にとって功罪両面があるでしょう。Perl 5には自然言語の機能を取り入れて、幾つかはうまく行ったのですが、それ以外は上手く行きませんでした。
A. コンピュータに関するかどうかとは別に、私たちはそれぞれ、(別の背景をもった)存在です。それぞれの個性を持ち、強さと弱さを持っています。強さはあなたを特別なものにしていますし、弱さもまた、あなたを特別なものにしています。それは「カミ」がお決めになったことです。
Q. 言語学の中でも何を専攻していたのですか?
説明すると長くなりますが、こんな感じです。
最初は化学と音楽を専攻していました。でも、もっといろいろなことを勉強したくなって、古典ギリシャ語のコースをとったのです。それからグロリア(ラリーさんの奥さま)の兄弟が『指輪物語』を薦めてくれたのがきっかけで、文学についても探求することになりました。
それですっかり混乱してしまったんです。教養課程での最初の3年間はコンピュータの基礎を学び、専門課程でもコンピュータについてさらに学んでいたけれど、もうそういうこと(コンピュータサイエンス)には、それほど魅力を感じなくなっていました。
その頃に私とグロリアは結婚し、文字をもたない言語について共同研究しようとアフリカに行く計画を立てたのです。その矢先に私は食物アレルギーになってしまって、その計画は中止することになりました。 そこで大学に戻って言語学の学位を取ることにしたのですが、当時、言語学のコースでは4つの言語を履修することが求められていました。でも私が学んだのはギリシャ語のコースだけだったのです。 しかし私は幾つかのコンピュータ言語、FORTLAN、COBOL、アセンブリ言語などを学んでいたことを思い出しました。(言語学科の)教授たちに、それで条件を満たしていると認めてもらい、言語学の学位を授与されたのです。
Q. プログラミングPerlの第4版を執筆する予定はありますか?
A. ダミアン・コンウェイ(Perl6の開発マネジャーで、『Perlベストプラクティス』の著者)が計画しています。
Q. もっと厚くなるのですか?
A.(困った顔で)ああ、ワオ。ウーン、シリマセン(笑)。 (Perl 6は)もっと大きな言語になるけれど、もっとシンプルな言語になります。だから...上手く言えないですね。
Q. オライリーの読者にメッセージを。「私の本を買ってね」と言ってくださっても結構です。
オラ...オライ...この名前は発音しづらいね(笑)。オライリーの本は大好きです。それにオライリーの人々と仕事をするのも楽しい。本を書いている時には、素晴らしい人たちだと思います。彼らはテクノロジーを人々が楽しく思えるようなものにするノウハウを持っていますよ。オライリーの本を買ってね!(笑)
Q. ありがとうございました。
A. イーエ、ドウイタシマシテ。