「デザインが世界を変える」と言うのは簡単ですが、実際の現場では組織内の人間関係、会議や納期、そしてお金に振り回されてしまいます。本書は、そんな“理想と現実のあいだ”で奮闘するデザイナーのための実践書です。著者ジョエル・マーシュ氏は、世界的企業からスタートアップまで300以上のプロジェクトを手がけてきたUXアーキテクトで、本書ではユーザーエクスペリエンス(UX)を「ビジネスの価値創造」と結びつけるための考え方と手法を、現場のリアリティをもって解説しています。本書の第1部「コト(What)」では、eコマースやB2B、AIプロダクトなど、状況に応じたUXの設計方法を具体的に紹介し、第2部「ヒト(Who)」では、上司や同僚、顧客、そして自分自身とどう向き合うかを描きます。価値(Value)・診断(Diagnosis)・確率(Probability)という「VDPフレームワーク」を軸に、理想論ではなく“現実で動き、成果を生むUX”を学べる一冊です。
UX for Business
―デジタル変革時代のビジネスデザイン手法
Joel Marsh 著、相島 雅樹、磯谷 拓也、反中 望、松村 草也 訳
- TOPICS
- Design
- 発行年月日
- 2026年03月25日
- PRINT LENGTH
- 384
- ISBN
- 978-4-8144-0147-5
- 原書
- UX for Business
- FORMAT
目次
賛辞
はじめに
第1部:コト(What)
1. まっとうであるということ
まっとうなデザインの見分け方
UXはプロセス:人間は定数
UXはプロセス:ビジネスは変数
リアルなUXのためのVDPフレームワーク
2. 価値(Value)
V = 価値(Value)
ユーザーニーズ + ビジネスニーズ = 価値
まずはユーザー、次にビジネス。そして常に両立を
では、ビジネスモデルとは何か?
価値はユーザーのためのものであって、UX界隈の専売特許ではない
効率ニーズ:少なくして、よくする
娯楽ニーズ:良い感情をもたらす
ビジネスのための価値:効率
ビジネスのための価値:伸ばし方
素晴らしい。で、あなたは何をつくっているの?
ビジネスモデルに導かれる
価値のまとめ
3. 診断(Diagnosis)
「やったけど、だめだった」
診断型デザインのすすめ
医師をイメージする
医師であるかのように考える
来歴を確かめる:文脈がすべてだ
まず基本を尋ねる: 誰が(Who)、何を(What)、いつ(When)、どこで(Where)、なぜ(Why)
症状を探る
症状の変化を問う
症状のリストをつくる
症状のかたまりを見つける
問題を定式化する
確認のための検査(理想的には実際のユーザーと)
「仮説」+「検査結果が陽性」=診断
デザイナーは医師、デザインは患者
診断型デザインの大きなメリット
診断型デザインは実証済み
個人的には……
診断型デザインのまとめ
4. 確率(Probability)
運に頼るな、ちゃんとやろう
すべての条件が同じなら、ユーザーは何を押すのだろうか?
確率的直観に従えば、1つめを見ずに2つめを見ることはない
労力も時間も確率
インセンティブ(動機)も確率
「で、誰がその行動をとるの?」
UXでは数字がものを言う
データ + 確率の理解 = インサイト
ユーザー数が多いほど、予測は確かに
確率は最適化
デザインとはつくり直すことだ:2度目の挑戦は1度目よりもうまくいく
微妙な差異を探索し続ける
つまり確率でデザインするということは……
5. VDPフレームワーク
動かして、整えて、拡大する(Make It Work, Make It Right, Make It Scale)
価値・診断・確率の三位一体
6. ちょっと寄り道:アドバイス
たいていのアドバイスは、いけてない
7. シンプルなボタン
ボタンなんて簡単!?
たかがボタン。されどボタン
本当にボタンが解決策なのか?
来歴を聞き取る:このボタンは何をする?
建設的なボタン
建設的なボタンの確率を高める
スペシャルなボタン:成否を決する建設的なボタン
破壊的なボタンは価値を減らす
破壊的なボタンの確率を下げる
適度な摩擦
倫理的注釈
8. モーダル
独立したボタンなどない
建設的なモーダルとスペシャルなモーダルの確率を高める
破壊的なモーダルには適度な摩擦を
9. 1つのページ
いくつかのデザイン要素をまとめて、1つのページにしよう
来歴を確かめる:このページは何をするのか?
来歴を確かめる:リードジェネレーションページ
来歴を確かめる:価格ページ
あなたは知りすぎている
クリックの優先順位をつけよう
スクロールはナビゲーションである
プロのヒント:見えていることと読めていること
スクロールを止めるのは難しい
ビジュアルヒエラルキー
ビジュアルヒエラルキーを使って確率をコントロールしよう
比較をうまくデザインしよう
選択肢をデザインするときは倫理的であれ
10. フロー
情報アーキテクチャの一種:フロー
コンバージョン
来歴を確かめる:このフローの目的は何か?
デザインは双方向の会話
フローは時間を含む
フローの目的に合わせて設計する
任意か必須か?
価値のある情報を最初に取得する
どれだけ馴染み深い設問か?
素早さか正確さか?
情報量かコンバージョン数か?
ユーザーにとってどれだけ必要か、価値があるか?
一つ一つのステップを軽くするか、ステップ数を減らすか?
ユーザーはこのフローをどれくらいの頻度で使うのか?
入力を集めるだけか、それともユーザーに選択をさせるのか?
それは長すぎないか?
法的、財務的、またはセキュリティ上のリスクはあるか?
フローをどのように測定すべきか?
11. ちょっと寄り道:リデザイン
デザインはリデザイン
なぜ複数のバージョンをデザインするのか?
すべてレスポンシブにしたほうがよいか?
一貫性は常に良いことではない(機能的不一致)
ブランドはUXではない
A/Bテストは科学であり、推測ではない
12. サイト構造
もう1つの情報設計: サイト構造
メニュー構造は「意味」より「価値」で考えよう
構造は「確率」に基づいて設計しよう
「離脱」はいつでも起こりうると心得よう
アクセス解析:サイト構造を全体と捉えて診断しよう
3画面からなるシンプルな銀行アプリ
設定も忘れずに
診断:このアプリは効率性を重視すべき
確率:効率性を高めるために
もう1つの構造:3画面からなるシンプルなポートフォリオサイト
ポートフォリオは効率型か娯楽型か?
診断:1つのプロジェクトしか見てもらえない?
確率:なぜそのプロジェクトだけが見られるのか
ループが効果を発揮する理由
小さなループが大きな成果を生む
13. シンプルなビジネス
まずECサイトの話から
ブランドを理解しよう
価値1:ブラウジングと意図的な検索
価値2:商品を購入する
完璧を目指そう
定量的にも定性的にも考えよう
初回で決断してもらわなくてもいい
比較して考えよう
勝率を上げよう
14. コンテンツ重視のプロダクトとサービス
コンテンツを目的としたサイト
コンバージョンを必要としない売上
大事なのはビュー数
時間あたりの訪問数も大事
診断:ユーザー価値とビジネス価値のバランスを取る
対立:ユーザー価値 VS ビジネス価値
もう1つの対立:ペイウォール VS 広告
長期トレンドで見てみる
確率:最良のコンテンツとユーザー
15. 複雑な構造
実際のサービスはもっと複雑
サイトが大きければ、構造は特に重要になる
メインメニューにいれるもの
情報密度
ビジネス価値をユーザー価値に添わせる
逆走禁止
万物のナビゲーション:ショートカットは最強だ
検索、メニュー、スクロール、動的コンテンツ……すべてを一体化させる
16. ナビゲーションとしての検索
検索は洗練されたメニュー?
Googleは、インターネットのメインメニュー
悪い検索機能はないほうがマシ
良い検索は多くの価値を生む
検索は予測できない:データが味方になる
検索には目的が必要である
確率:データによる並べ替え
17. マーケティングドリブン VS 収益ドリブン
エージェンシーの仕事に偏りすぎると、価値の感覚が歪むことがある
ブランド価値かビジネス価値か?
目的が異なる
本質的な違いは「入力と出力」
18. ちょっと寄り道:競争優位とは何か
真の競争優位性とは長期的なものである
19. マーケットプレイス
複雑なプロダクトとサービスは、その機能の総和以上のものである
プロダクトとしての需要と供給
マーケットプレイスは特定の方法で収益を上げる
診断:ユーザーはどのようにお互いを探すのか?
診断:マッチングするユーザーの割合は?
診断:ユーザーが決断するために他に何が必要か?
詐欺師は詐欺をはたらく
確率がマーケットプレイスを淘汰する
マーケットプレイスのデザインは確率を劇的に高めるべきである
確率はマーケットプレイスの本質である
20. B2Bソフトウェア:SaaS・PaaSなど
B2Bとは何か
B2B、B2C、B2B2C
一般的なB2BとB2C
営業主導のUXへようこそ!
決裁者(Buyer)とユーザー
あなたが売っているのは本当は何?
実際に売れるものをつくろう
セルフサービスか営業か
顧客が買うものをつくるために、何を仕入れるか?
収益モデル:課金方法が明暗を分ける
衝動買いか、それとも予算検討か
ヒント:カード限度額に合わせて価格を設計する
21. ソーシャルネットワークとコミュニティ
ユーザーがプロダクト
機能としてのつながり
無料が大きな利益を生むことがある……いつかは
ネットワーク効果とは何か
バイラルは指数関数的に成長する
反面教師:Clubhouseの例
マネタイズ方法が問題を決める
社会的インセンティブは強力な武器
その機能、むやみに振り回すなよ ―装填済みだぞ!
なぜアルゴリズムなのか?
コンテンツ作成と消費の確率
なぜ企業の多くは自分たちのコミュニティを壊してしまうのか
22. ゲームとゲーミフィケーション
本格的なゲームデザインは本書の範囲外
ゲームは娯楽であり、効率ではない
気分を数値化する:ゲームの要諦
ゲーミフィケーション
お試し無料
難易度は機能
ビジネスモデルはゲーム構造に合わせる
診断と確率はゲーム次第
23. 社内ツール
離脱できないユーザー
収益はユーザーの要望だけから生まれるわけじゃない
社内ツールはあなたを成長させる
自分たちの都合を優先したくなる誘惑に抗え
プロの視点:価値ある課題の兆候を見極めよ
十分なユーザーがいなければデータは意味を持たない
24. 機械学習、AI、データプロダクト
AIは新しい時代の定番
新たな知識ではなく、新たなスピードとして捉えよ
データの活用に必ずしもAIは必要ない
データは何のためにあるのか?
データの品質もまたUXの課題である
データを可視化する
バイアスの制御と確証
もし数字が苦手ならこの仕事はすべきでない
データに関するユーザー調査も立派なデータである
真実なんて誰も欲しがってない?
25. エコシステム
「エコシステム」とは何か?
依然として確率が構造を定義する
VDPはまだまだ通用する!
戦略:どのようなエコシステムが必要か?
ブランドエコシステム
エコシステムの価値は間接的に生まれることも多い
戦略に関する補足
26. メタデザイン:課題に応じたデザインをする
「あなたのやり方」は1つではない。柔軟に進めよう。
解決策はまず調査で確かめてから検討しよう
ドッグフーディング:誰も使わない最高のリサーチ手法
ドッグフーディングは、不快であることが価値になる
責任を他人に押しつけないこと
27. どのように優先順位をつけるか
VDP、それは仕事の優先順位をつけるための優れた方法
未来の価値
V 次に D そして P
28. いろいろな場面でのデザイン
予算がないときのデザイン
潤沢な予算があるときのデザイン
締め切りが厳しいときのデザイン
締め切りがないときのデザイン
完全に自由なときのデザイン
厳しい制約があるときのデザイン
重たいレガシーと向き合うときのデザイン
成長のためのデザイン VS 収益のためのデザイン
ゼロイチ(0→1)のデザイン
29. VDP実践虎の巻
価値創造(Value Creation)
診断型デザイン(Diagnostic Design)
確率(Probability)
第2部:ヒト(Who)
30. 企業文化 VS あなた
あなたのせいじゃなくて、たぶん彼らのせい
ステークホルダーをどう説得すべきか?
すべてを説明する必要はない
「譲れない一線を見極めろ」
31. 異なるタイプの会社で働くということ
スタートアップにおけるUX
大企業におけるUX
1人UXチームとして働く
大規模チームでのUX
規制業界におけるUX
上場企業でのUX
有名ブランドにおけるUX
32. ちょっと寄り道:資料の話
本書で資料についてあまり取り上げない理由
みんな資料にばかり注目する!
資料によるコミュニケーションについての簡単な補足
33. 異なるステークホルダーとの協働
誰もがUXをできるわけではない
協働のメリットと衝突
UX VS 営業
UX VS マーケティング
UX VS プロダクト
UX VS KPI(重要業績評価指標)
UX VS 開発者
なぜ開発者は「アジャイル」が好きで、UXデザイナーはそうでもないのか
UX VS カスタマーサポート
UX VS UX
UX VS UI
UX VS プロジェクトマネージャー
UX VS ファイナンス
UX VS リーダーシップ
34. ユーザーと働く
実際の現場でのユーザー調査
最大の成果は優れた調査から生まれる
私の場合:ユーザーからではなくデータから始めることが多い
なぜ複雑な手法はたいていダメなのか?
例外:膨大なユーザー数を抱える場合
アクセシビリティ
プロのヒント:まずはユーザーが安心して参加できる環境づくりを
観察
アンケート調査
タスクベーステスト
ユーザーインタビュー
フォーカスグループ(がなぜダメなのか)
ユーザーを助けてはいけない
みんな、嘘つき
外部サービスを活用したユーザーテストについて
A/Bテスト
35. 自分自身との向き合い方
私たちはみな人間
ステークホルダーを説得する方法:もう1つの視点
正しいこと VS 好きなこと
ユーザーのために使いやすくし、自分のために楽をしない
ディスカバリー VS リサーチ
調査ごっこは、すべての人にとって有害
症状ではなく、原因に対処せよ
共感しすぎることのリスク
「優良顧客から非本質的な機能要求。どう対応する?」
常に実用性を最優先せよ
調査も戦略もなければ、意思決定はデタラメになる
当事者意識を持ってデザインする
訳者あとがき